アンティークピューター・ティーポットの修理

イギリス製アンティークピューターのティーポットの修理依頼。
修理部分は、①注ぎ口根本の穴埋め②注ぎ口凹み部分③蓋摘み接合部の緩み(回転固定部分の穴を小さく)④摘み部分の蓋の凹み⑤脚のがたつき がご要望です。

ネジ式の摘みを外し、銅製のカシメて付いているワッシャーを外し、摘み部分を取り除きます。
蓋部分の凹みを叩いて直します。衝撃で取っ手根元付近の象牙?の輪が割れないように注意します。
中央穴後ろの回転止めの穴が大きいために摘みが大きくガタつくので、後ろの穴を錫で共付けで埋め、小さ目の穴を開け直します。

口尖端はぶつけて凹んだ跡と思われるが、綺麗に注げないとのこと。酸化被膜を削って錫を盛り付け接合し整形します。
根本接合部分はロウ付け部分に小さな穴が1か所目視で確認できたので、ロウで埋め、漏れが無いか確認すると、根本下半分の数箇所が幽かにロウが剥がれてしまっていることが後でわかりました。接合するには酸化被膜や汚れを取らないと出来ないため、リューターで削りながら錫地肌を出していくと、結局下半分全てを削ることに。共付けとロウ付けで塞いでいきます。色味が変わって目立つが実用できるためには仕方がないと判断しました。実用のため、樹脂で埋めて塗装するわけにもいきませんので。
火を使う修理では後から見えなかった修理箇所が出てくることがよくあります。


脚部分を木槌で軽く叩いて微調整してがたつきを抑え、摘み部分を再度元通りに取り付け完成です。

西洋器に関しては今まであまり勉強してこなかったため、依頼主に紅茶器の事を教えて頂き、器の造りの部分、使う側からの器のご意見も伺うことが出来、私の作品に活かせることと思います。勉強になりました。

修理は私の技術でも役に立てればと、可能な範囲でお引き受け致しますが、古今東西の錫器の造りを知ることが出来、感心するところと同時に生産性重視で使う側からの不満点も伺えます。手間は掛かっても良きものを創ることが、工芸作家としての拘りでもあると思います。