手仕事

私の制作の主な技法を紹介します。我流のものも多くありますが、伝統工芸技法を元に工夫したものです。
錫成形技法には大きく分けて、型に流す「鋳込み」、鋳込みから出来たものを轆轤で回しながら削る「轆轤挽き」、板状から成形する「板もの」があります。伝統錫工芸では「鋳込み」「轆轤挽き」が生産の多くを占めます。私の作品は「板もの」製法が殆どです。破錫も「板もの」製法になります。

【板作り】

 

錫板製法は「鋳込み」になります。石板の間に紙や金属の枠を挟み、石板をずらして枠の中に熔けた錫を流します。石板の表面に紙を一面に貼ることで、表面温度のむらを少なくします。又、模様紙を貼り、「鋳込み模様錫板」を作る事も出来ます。何れも古来からの伝統工芸の技法です。

【キサゲ掛け】

錫工芸の板もの製法で最も特徴的なのが「キサゲ掛け」です。特製の刃物「錫用キサゲ」を用いて錫板の表面を剥ぎ、錫の地肌を出します。又、このキサゲ掛けは板状以外でも用い、研磨を大幅に短縮することが出来ます。

【錫割り】

加熱により熔ける瞬間に、錫板の周りをフリーハンドで割っていきます。そのため、全く同じものはありません。銘に沿った基本型に割り、微調整して全体を整えます。

【模様打ち】

様々な表面の模様打ち用の金鎚で叩いて、表面に打ち目模様を付けます。金鎚も手製のものが多いです。金床と金鎚で錫を絞めますので硬化します。

【木槌成形】

木槌は板を平らに直したり、皿や鉢の場合は板状から立体へと成形し形を起こす場合に使います。木槌と金鎚は目的と効果が異なりますので、それぞれを使い分けて成形します。

【バーナーワーク】

 

バーナーで、融点の低い錫合金「ロウ」を熔かして接合する「ロウ付け」や、錫を熔かして接合する「共付け」を使い分けます。錫は融点の低い金属ですので、バーナーワークは炎を操る繊細な作業です。

【磨き】

私の作品には鏡面磨きの仕上げのものはあまりありませんが、研磨剤を何段階にも分けて慎重に磨いていきます。磨いている過程で発生する錫の磨きカスで傷を付けないようにする、非常に高度な技術を要する作業です。